教育、学び、そして学校 〜 注20

公開: 2024年2月8日

更新: 2024年2月8日

注20. 機械学習

生物は、植物でも、長い年月をかけ、その形や姿、繁殖する場所などに適合するように、自分自身を変えてゆきます。植物の場合、それは遺伝子が変化することで起きます。動物でも脊椎動物になると、遺伝子の変化だけでなく、獲物を捕らえるために自分の行動の仕方を変える場合もあります。進化論を唱えたイギリスのダーウィンが、ガラパゴス諸島で発見したのは、姿形が似ている動物でも、生息する島が違うと、海中で餌を採って食べたりするトカゲが居たりしました。普通、爬虫類(はちゅうるい)は、地上で獲物を捕り、生活しています。

みのように生物が、生きている環境に合わせて、姿形や、行動の仕方を変化させることを、「学習」と呼びます。人間も、火を使って、食べ物を焼いたりしますが、これも人類が長い年月をかけて、自然から学んだ行動変化の一つの例です。人間以外の野生の動物の場合、食べ物を火を使って調理する例はありません。特に、学習は、脳を活用する人間が持つ、顕著(けんちょ)な習性の一つです。このほとんど全ての生物が行う「学習」は、生物だけに見られる変化で、単なる「もの」である、人間が作り出す「機械」には見られない、「動きの変化」です。

機械は学習しないのが特徴です。機械は、長い年月にわたって使っていると、部品がすり減ったりして、最初と同じように動かなくなることがあります。これは、学習の生ではなく、「摩耗」(まもう)のためです。摩耗によって機械が正常に動かなくなったりする以外、機械はいつまでも、同じ動作を繰り返すことができます。人間の場合、同じ動作を繰り返していると、動作の仕方が「うまく」なります。これは、「人間の学習」の成果です。しかし、人間の場合、繰り返しが一定の回数を超えると、「飽き(あき)」がきて、その作業をやめたくなります。

学習も「飽き」も、人間の頭脳が持つ、「記憶」のなせる技です。最初のうちは、記憶の力で、動作を効率的にするように体の使い方を変えてゆきますが、動作を効率的に変えることが難しくなると、人間は、その動作を繰り返すことに「飽きて」しまいます。これは、人間に記憶があるから起こるのです。従来の機械には、人間の記憶にあたるものがないため、繰り返すことはできますが、「効率的に動作できるように部品の動きを変えること」や「同じ動作を繰り返すことに飽きること」はありません。

コンピュータには、記憶する装置があります。この装置の働きによって、コンピュータも人間のように学ぶことができます。この「学ぶこと」をコンピュータで行うための方法が、ニューロンとシナップスの理論に基づいたニューロ・コンピュータによって、可能なりました。その後、ディープラーニング(深化学習)の理論が提案され、人間の学習に似た動作を、コンピュータで真似ることができるようになりました。この方法では、コンピュータへの入力を、人間が経験したものから作り出し、その入力に対する人間の望ましい出力を作り出すように、神経ネットワークを調整するやり方を、機械学習と呼びます。

参考になる資料